以前、小学一年生の女の子に国語を教えたことがありました。
擬音語の単元で、
犬なら、「ワンワン」
猫なら、「ニャーニャー」
といった擬音語を答える問題があり、
「時計」の擬音語をたずねる問題でその子は、
「時計は音がしません」と答えました。
そう言われるとたしかに最近の時計は静かで、デジタル時計ならまったくの無音といってもいいくらいです。
擬音とは、その物が発する音を模して象徴的にあらわしたものなので、実際の音とはかなり異なる場合もありますが、
まったく音がしないと思っているものに、「擬音」を問われて答えられないのは当然の気がしました。
ただその教室には掛け時計があり、
これを耳に当てたら何か聞こえるかもしれないと思い、
その掛け時計を壁から外して、実際にその子に聞かせてみました。
時計に耳を当て、その子はしばらくじっとその音に聞き入っていました。
「どんな音がする?」と聞くと、
その子は真剣な顔つきで、
「ガチョーン、ガチョーン、ガチョーン……」(数回繰り返しました)
と答えました。
まさかそんな音がするはずはないと思い、
わたしもその時計を耳に当てると、
たしかに、「ガチョーン、ガチョーン、ガチョーン……」と聞こえます。
秒針が揺れるたび、はっきりと「ガチョーン」と時計は鳴っています。
あるいは、その子の言葉の印象が強すぎて、もはや、「ガチョーン」にしか聞こえなくなったのかもしれませんが、いずれにせよ、その国語の問題の正解である、「チクタク」とはまったく聞こえませんでした。そんな音がする? と思われる方は、一度聞いてみてください。一秒ごとに秒針が動くタイプがいいです。時計によっては聞こえないかもしれませんけど。
いつか、いろいろな擬音語が通じなく日が来るんだろうなあ、と思った日でした。